インド 2019年度国家予算発表 抑えておきたい9のポイント vol.504

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インド財務省は7月5日、2019年度(19年4月~20年3月)の予算案を発表しました。前日の経済調査でも発表されたとおり、2024年に向けての5年間でインドを5兆ドル(約540兆円)規模の世界第3の経済大国にすべく設計された予算案は、年8%の経済成長を実現するためのもので、前年度予算から13%にあたる27兆8千億ルピー(約43兆円)を増額しました。

 

今回はインドの2019年度予算発表で抑えておきたい9のポイントをお届けします。

 

インド政府 2019年度予算抑えておきたいポイント

1)外国からインドへの直接投資をより魅力的にするための緩和策

航空、メディア、保険などの分野のFDI(Foreign Direct Investment=外国企業による対内直接投資)において、インド政府は海外からの直接投資を誘致するため、全体的な規制緩和する方針です。そして保険の販売代理店においては外資の100%出資を容認する方向を示しました

小売り部門では、単一ブランドを展開する外国企業の出資比率が51%を超える場合に生じる「30%以上の国内調達率」の条件が緩和される見通しです。

 

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2019-03-05

 

2)所得税申告書(ITR)の提出のためPANカードとAadhaarが交換可能に。

インド政府はPANとAadhaarのカードを交換可能にする決定を発表しました。PANとAadhaarに互換性が生まれることにより、PANを持っていない人でも所得税申告書(ITR)を提出することが可能になります。納税者は今後、ITRを提出するにあたり、AadhaarカードまたはPANカードのいずれかがあれば納税できる状態になり、納税者の利便性を向上させます。

さらに特定の所定取引について、PAN / Aadhaarの見積もりと認証を提供することを義務付けることによって、高価値取引を追跡するための新たな一歩を踏み出しました。これらの規定の遵守を確実にするために、罰則規定を修正することも提案されました。

 

3)5兆ドル規模の経済に向けて

政府は本格的にインドを5兆ドル規模の経済にする目標を強く宣言しました。インド経済は現時点で年間2.7兆ドルの規模になっており、更に3兆ドル規模に今年到達する見込みです。購買力平価(PPP)の観点から、2024年までに5兆ドル規模の経済規模を目指し、米国と中国に次いで世界第3位の市場を目指します。

 

4) 2024年までにすべての農村地帯に飲料水を届けると宣言。

2024年までにすべての農村世帯に飲料水を提供すると発表しました。政府は現在、安全な飲料水を国のあらゆる地域(特に農村地帯)に提供することが優先度の高い課題であると指摘しました。政府は水資源の管理と飲料水の供給を総合的に取り組むための新しい省を政府内に設置し、本格的に対策を練ります。

 

5)デジタル化を強化

政府はインド国内のキャッシュレス化を推進していくため、キャッシュレス取引に対して複数のインセンティブを導入しながら、上限を超えた現金の使用に対するペナルティも実行していくことを発表しました。政府は、銀行または郵便局の口座からの1年で1000万ルピーを超える現金引き出しにおいて、源泉徴収税(TDS)2%を課すことを発表しました。さらに、年間売上高が5億ルピーを超える事業所では 、 BHIM UPI、UPI-QRコード、Aadhaar Pay、デビットカード、NEFT、RTGSなどの低コストデジタル支払方法を顧客に提供するように政府からの指示がありました。

 

6)ガソリン、ディーゼルの税が上昇

政府はガソリンとディーゼルの増税を発表しました。石油計画分析セル(PPAC)のデータによると、17年度が1バレル47.56ドル、18年度は56.43ドルでした。2019年6月のインドの原油1バレルのコストは62.39ドル、そして 4月の平均価格は1バレル71ドルでした。

データより、原油価格が高かった値から下がってきているため、ガソリンとディーゼルの税を見直した背景があり、Nirmala Sitharaman財務相は演説の中で、特別追加消費税とRoad and Infrastructure Cessと呼ばれる関税をガソリンとディーゼルでそれぞれ2ルピーずつ増やすことを提案しました。

 

7)法人税

政府は25%の低い法人税率の対象企業を、年間売上高の上限を25億ルピーから 40億ルピーに引き上げることを提案しました 。現在、インドの法人税率は、競合国で最も高い国の一つです。2015年、これに対処するため政府は、今後4年間で免税の相殺を伴う法人税率の引き下げを提案していました。法人税率は25%まで引き下げられましたが、年間25億ルピーの売上上限を設けていました。インドの法人税率を他のアジア諸国経済と同程度にするという公約を満たすために今回の変更が発表されました。同提案は、インド国内にある企業の99.3%が対象となります。

 

8)電子自動車への後押し

電気自動車を購入するために借りたローンの税金控除を発表しました。これは、電気自動車の価格を抑え、消費者にとって手の届きやすいものにする目的があります。また、ローンで自動車を購入する顧客に対し、15万ルピーの所得税の払い戻し を導入することを提案しました。電気自動車の特定部品の輸入に対する関税の引き下げも発表しました。

EVのGSTを12%から5%に引き下げ、追加の所得税引き下げは大きな後押しである。消費者は電気自動車を購入する。

 

9)女性に対するEmpowermentのための予算

インド政府は、女性に関連する予算の発表について、女性自助グループ(Self Help Group)を全地区に拡大し、各グループ内の女性に最大10万ルピーの融資を許可する制度を発表しました。予算発表を担当した財務大臣Nirmala Sitharamanはインド歴代の中で、最初のフルタイムの女性財務相であり、女性のエンパワメントに関する政策の発表は、インドの政治史に残る一歩となりました。政府はまた、若者に対する外国語を含む海外での仕事をするために必要なスキルセットの支援も発表しました。

 

 

今回の予算、日本へのメリットは?

今回の予算案において日系企業が注目するべき点は、インド政府の出した予算発表が、外国の直接投資に対して優位なものが多い点です。単一ブランドを扱う小売業を展開する外国企業の出資比率が 51%を超える場合に生じる「30%以上の国内調達率」の条件が緩和される見通しであり、これからインド進出を検討する日系企業において追い風となる政策になるでしょう。

世界的な減速にもかかわらずインドは外国投資を受け続けていましたが、外国投資家がインドを魅力的な投資先にしていないという話も過去には多くありました。2018年から19年にかけて、インドへの直接投資(FDI)に関する産業内貿易促進局(DPIIT)が発表した最新の報告によると、FDIは1%減少して443億ドルとなっています。

 

その理由は高い法人税率、不確実な税制、および電子商取引政策などの不確実な政策環境によるものであり、インドは外国企業にとって最も事例の多い訴訟国の1つとなっています。

一部、予算の確保に懐疑的な政府関連者のコメントもあがっていますが、インドが今後5年間の経済成長を確実なものにするために、外国からの投資に優しい環境を作ることはインドにとって重要なポイントなのです。

 

 

また「Make in India」で掲げている国内産業の活性化において、食品加工、化学品、プラスチック、ゴム、製紙業、繊維製品、セラミック製品、鉄鋼、電子製品、自動車部品に関連に対する関税の引き上げが行われ、より国内産業への投資が期待され、間接的に政府が外国企業への投資を促していることがわかります。

 

個人および法人の税率の緩和も、インド経済を刺激するでしょう。日系企業にとっては今後のインドの経済成長をうまく機会として活用する条件が整っています。

 

以上、今回は2019年のインドの国家予算について簡単にまとめました!よりインドの国家予算、インド市場への進出、マーケット調査等、詳細が詳しく知りたい方は、ぜひお問い合わせフォームからご連絡ください。

 

この記事はCoinmen Indiaのスポンサーでお送りしています。

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KAYO OSUMI

函館生まれ 北海道大学医学部卒。2016年9月よりインドの現地採用で就業。当時よりインドに進出する日系企業向けに、インド現地の話題やビジネスに特化した記事を合計600本以上執筆してきている。2018年1月から東京拠点に移し活動を続ける傍ら、現在は株式会社メルカリのインド人・外国籍エンジニアの就業支援。引き続きインドのマーケティング、調査、人材採用を強みとする。
Kayoreena
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