トランプ大統領 インド訪問 モディ首相との貿易交渉は vol.519

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みなさんこんにちは!Kayoreena(@kayoreena1021)です!

 

本日は2月末の『トランプ大統領 インド訪問』についてのまとめ記事です。

 

今回、どうしてトランプ大統領はインドに訪問したの?モディ首相はトランプを歓迎したのか?訪問の結果、何が変わったの?などなど、米国・インド間の関係について簡単にまとめていきたいと思います!

 

Contents

トランプ大統領 インド訪問

まずはじめに今回の商談の日程についておさらいします。

 

2020年2月24日から2月25日の2日間にかけて、トランプ大統領はインドを訪問しました。トランプ大統領がインドを訪問するのは初めてのことです。

 

今回の訪問の日程を簡単におさらいします。外務省が発表した公式なスケジュールによると、2月24日の午前11時にモディ首相の地元であるアーメダバードの国際空港に到着後、1時からは地元のスタジアムでの「ナマステトランプ」と題した地元の方10万人以上が参加した歓迎イベントが開催されました。

ナマステトリビア1:

モディ首相&トランプ大統領のイベントは実は2回目。1回目は2019年9月「ハウディモディ」参照リンクはこちら

アメリカとインドに関する大きなイベントが開催されたのは実は2回目。一部地方メディアでは「ナマステトランプ(今回のイベント名)はハウディモディの続き」と言われていた。ハウディモディとは2019年9月にテキサス州ヒューストンで開催された過去最大のインド人による集会で、全米から約50,000人が集まったと言われています(ちなみに米国に滞在するインド人は300万人以上)

 

ナマステトリビア2:

トランプ訪問の影で起こるスラム街への圧力

トランプが訪問することで、街は急速に歓迎用の整備が必要になりました。そのため、会場近くに家を構えていたいわゆるスラム街の人たちで、市から「立ち退き通知」が出される家族もいました。更にスラム街の様子がスタジアムから見えないようにするため、急遽スラム街を隠すように壁が作られました。

参照リンク 

 

トランプ大統領はこのスタジアム内でのスピーチの中で、モディ首相のことを「傑出した指導者、インドの偉大なる闘士」と盛大に称え、アメリカにとってインドが重要な友人であり、パートナーであり、とても尊敬していると述べました。

その後アーグラに移動したモディ首相はタージマハルを訪問しました。


最終的に首都のニューデリーに到着しました。火曜日の朝にラシュトラパティ・バヴァンで儀式的な歓迎を受け、これに続いてアメリカーインド間の協議のためにモディ首相と商談し、25日の午後10時には、トランプ大統領はアメリカへ戻りました。

Kayoreena
めちゃくちゃ弾丸スケジュール!

今回のメインはトランプ大統領とモディ首相の「アメリカーインド間の商談」ですが、このブログの後半ではこの「商談」についてもう少し深堀りしていきたいと思います。

トランプ大統領にとってモディ首相は「厳しい交渉人」その意味は

写真はThe Weekより引用

今回のやり取りをまとめた共同声明はこちらのリンクから確認できますが、ここでは簡単に決まった内容について皆さんとシェアします。

インドがアメリカの武器 30億ドル分の購入を決定

トランプ大統領は24日のスピーチで「私たちは最高の武器を作ります。飛行機、ミサイル、ロケット、そして船。私たちは最善を尽くし、現在インドと取引しています」と語りましたが、今回の訪問で正式にインド側のアメリカ製武器の購入(3000億円相当)が決定しました。

Trump
私たちの軍隊が訓練を行い、並行して活動し続けるため、共同防衛力を強化していきましょう!

大規模な貿易協定がない場合、陸軍と海軍のためにこれらのヘリコプターを購入するという協定は、トランプの訪問の最大の結果の1つとしてあげられます。背景として、アジアにおいてプレゼンスが高まる中国に対し、インド側が軍強化をしているという指摘があげられていました。

その他、インドとアメリカが共同で出した声明には下記のような内容があげられていたので簡単にまとめます。

  • 人身売買、テロリズム、暴力的な過激主義、麻薬密売、サイバースペースでの犯罪などの国際犯罪と共同で戦うことを決意。
  • エネルギーセキュリティの強化、各エネルギーセクターにわたる連携の拡大
  • 2022年に世界で初めて打ち上げられる予定の衛星のインド宇宙研究機関(ISRO)と米国航空宇宙局(NASA)の共同開発の推進。宇宙産業における協力。
  • 「Young Innovators」インターンシップなどを通じて、高等教育の協力や米国におけるインド人学生の教育機会の増加。
  • 米国とインドの消費者のために高品質で安全、手頃な価格の医薬品へのアクセスを促進する二国間覚書(MOU)
  • 金融、トレーニング、メンターシップのイニシアチブを通じて女性と女児の教育、経済的エンパワーメント、起業家精神を促進することの重要性、ならびに経済参加を促進するための米国女性グローバル開発と繁栄(W-GDP)イニシアチブとインド政府の「Beti Bachao Beti Padhao」プログラムの促進。
  • 通信においてオープンで信頼性が高い安全なネットワークの構築に取り組む
Kayoreena
米国は5G網構築で中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の製品を採用した場合、機密情報が中国側に盗まれる可能性があるとし、5G計画からファーウェイを締め出している。

長期にわたり中国から通信機器を調達してきたインドは、ファーウェイ製品を5G計画に採用するかどうかをまだ決めていないが『安全な次世代通信規格』の利用を促すトランプ大統領の発言は中国の存在を意識したものと読み取れる

Trump
アメリカの5Gを使え!

 

注目ポイント:インドとアメリカの貿易摩擦

今回の商談で一番注目されていたのは「アメリカ・インド間の貿易摩擦の解消」でしょう。世の中は「アメリカ・中国間の貿易」に夢中ですが、実は「アメリカ・インド間」というのも、重要なパートナーです。

2018年のアメリカ・インド間の貿易総額は1420億ドルと過去5年で5割近く増えており、インドにとってアメリカはEUに続き第2位の輸出国、また中国、EUに続き第3位の供給国(輸入相手国)であります。参照:U.S.-India Trade Relations

一方、米国側の貿易赤字は2018年300億ドル(約3兆2400億円)前後で推移しており、アメリカとしてはこの赤字をどうにかしたいと考えていました。

アメリカはインドに対し、多額の貿易赤字を抱えていることを問題視し、去年インド市場が閉鎖的だ、などとして輸出品への関税を低くして優遇する対象国から外したのに対し、インドも報復として関税を上乗せし、両国間で貿易摩擦が問題となっていました。

トランプ大統領 貿易摩擦解消へ インドと協議開始で合意

アメリカ・インド間の貿易摩擦に関する動きが加速したのは2019年の6月。アメリカがGSPという一般特恵関税制度からインドを抜いたことがきっかけで動き出しました。

 

この一般特恵関税制度(英: Generalized System of Preferences)は、関税に関する国際的な制度で、先進国が開発途上国から輸入を行う際に関税率を引き下げ、開発途上国の支援を目的とした制度です。この制度を利用し、アメリカはインドからの輸入品に関して関税を下げていたのですが、2019年の6月、アメリカがこの制度からインドを除外しました。

Trump
アメリカの製品をもっとインドで売りたいので、米国の製品のインドにおける関税を下げてください!そもそもインドは、世界と比較してもちょっと関税が高めですよ!それだと米国の品が売れないので関税を下げなさい!

 

モディ首相
トランプ大統領、一部の製品に特化するのではなく「平均関税について」議論するべきだ。インドの平均関税は13.8%で、米国の3.4%よりも高いかもしれないが、韓国(13.7%)とほぼ同じくらいだ。

それに他の国だって、一部の製品に高い関税を課しているじゃないか。僕たちは途上国としてはかなり関税は下げている方だと思う。これ以上下げるのは無理!

(自国の製品の経済循環を守る必要があるから、そんなに外国製品を歓迎するつもりもない)

 

インド政府は国に抱える多くの製造業と農家の人々の暮らしが、多くの外国製品の輸入により脅かされることを恐れており、慎重になっています。

 

Trump
インド市場を開放しないなら、インドを一般特恵関税制度のリストから除外します!今までインド製品に対する関税を免除していましたが、それを除外します!

*ちなみにインドは米国の最大のGSP対象国だった。米国がインドを一般特恵関税制度から除外

この一般特恵関税制度を利用してインドはアメリカに皮製品や医薬品、化学品、プラスチック、一部の農産物など、2017年時点で57億ドル相当を米国に輸出していました。関税制度の撤廃に反論したモディ首相は同年6月16日、インド国内における米国製品の関税を引き上げることを発表しました。

モディ首相
ひよこ豆、リン酸、りんご、アーモンド、クルミなどアメリカからの輸入製品28品の関税を引き上げます(引き上げによる追加収入は約2億1700万ドル(約240億円))
Trump
くうううう!!!!怒

 

変わらずアメリカはインドとの貿易において赤字が解消されません。そのためアメリカとしては今回の訪問で、大きなポテンシャルを秘めるインド市場にたくさんの米国製品を売るための何らかの交渉を実行するのが大きな目的だったのです。しかし各メディアの報道などを見てみると結果として、大きな進歩はなかったと見えます。

トランプ大統領は「非常に生産的な会談ができた。アメリカからインドへの輸出は今後、大きく増えるだろう」と述べて、成果を強調しました。

一方、モディ首相は「貿易について閣僚レベルで非常に前向きな話し合いができた」としたうえで、「話し合いは公正でバランスのとれたものでなくてはならない」とも述べ、慎重に協議を進める考えを示しました。

トランプ大統領 貿易摩擦解消へ インドと協議開始で合意より

ここで「インドとアメリカの貿易交渉が進まない背景」について深堀りしてみます。

◎インドの長期に渡る保護政策の歴史

多くの人口を抱え、大きなポテンシャルを持つインド市場は、これまで歴史的に自由貿易政策を促進するための施策を取ってきませんでした。数十年にわたる自国企業の保護政策により、その結果、インド経済は他の市場よりも国内消費による成長に偏っています。

例えばインド人の多くが従事し、国の第一産業である農業。しかし未だ信じられないほどの非効率なやり方で行われているこのインドの農業界に、多くの外資系企業は注目しています。米国農務省のアナリストは、増加するインドの国内需要を満たすため、米国の農業輸出業者にとっての機会と考えています。

◎直近のインド国内景気は不安定 経済保護する必要性

上記のように「自国企業の保護」「内需による成長」に頼ってきたインドは、自由貿易にして市場を開放できるほど国際的な競争力を備えていません。一方インドの直近の国内景気はというと、ノンバンク金融部門の信用低下の中、国内需要が予想よりも大幅に鈍化しています。そのため、より自国の産業保護を強化していかないといけません。

Kayoreena
インドの成長は、歴史的に消費主導型で推移しており、実際、現在インドのGDPのほぼ60%は消費によって決定されています。一方インドは輸出の部門が非常に弱く、コストが高かったり複雑な税制など、世界的に競争力がありません。

 

そういった背景もあり、貿易の自由化によるインド市場の開放に対して非常に慎重になっているといえます。

テロ対策や中国との政治的な対立上、アメリカとの友好関係を保ちつつ、自国経済を最優先に保護しなくてはいけないモディ首相は、今後どのような方向性で交渉を進めていくのでしょうか。トランプ大統領は今回の訪問で、インドが米国にとって重要なパートナーであると、猛烈なアプローチを表明していきましたが、米国大統領選挙が終わるまでは今後、アメリカインド間には大きな動きはないように見えます。

 

Kayoreena
10年後の世界の中心国となる(予定)の米国とインドのやり取りについて、後半は『貿易摩擦』についてまとめてみました!

米国とインド間のトピックについては他にも複数あるので、またこちらのブログで取り上げたいと思います!

こちらは2年前、安倍首相がインドを訪問した際の記事です。こちらもご覧ください!

日本で報道されない、インドでの安倍首相の活躍 vol.359

2017-09-16
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KAYO OSUMI

函館生まれ 北海道大学医学部卒。2016年9月よりインドの現地採用で就業。当時よりインドに進出する日系企業向けに、インド現地の話題やビジネスに特化した記事を合計600本以上執筆してきている。2018年1月から東京拠点に移し活動を続ける傍ら、現在は株式会社メルカリのインド人・外国籍エンジニアの就業支援。引き続きインドのマーケティング、調査、人材採用を強みとする。
Kayoreena
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