インドのソーシャルEコマース事情 -Tier2, Tier3を追え!- vol.512

にほんブログ村 海外生活ブログ インド情報へ

みなさんこんにちは!Kayoreena(@kayoreena1021)です!

 

今回のテーマは「インドのソーシャルEコマースの現状」についてです。皆さん、インドのEコマース事情と言えば、FlipkartやAmazonを想像するでしょうか。

インドも近年、急激なスマートフォン普及によりEコマースの利用が増えてきました。まだまだ伸びしろのある市場であることは確実で、今後の急速な市場の成長が期待されています。

そこで今回は、9月中旬のインド出張にて訪問させていただいたインドのソーシャルEコマースのスタートアップのお話より、インドのEコマース(特にソーシャルEコマース)についてお届けしたいと思います!

 

Contents

 

Kayoreena
皆さん、厳密にはEコマースの一種にソーシャルEコマースがあります。前置きでちょっとお伝えしたいと思います。

 

 

前置き:Eコマースの中のソーシャルEコマースとは

ソーシャルEコマースで有名な企業は中国のPinduoduoという企業がありますが、ここが提供しているビジネスモデルはプラットフォーム上でユーザー(一般人)が商品を紹介し、それを閲覧した人がその商品を購入できるソーシャル・ネットワークの機能とEコマースを合体した仕組みであり、それがソーシャルEコマースです。
最近では動画配信とECが組み合わされたライブコマースなどもソーシャルEコマースの仕組みの一つと言えます。

 

Kayoreena
インスタのストーリーにモデルさんが美容クリームを載せると一気に売れる!みたいなやつです。東南アジアのSNSを好む国やインドなどでも受け入れられる可能性があるとされています!

 

今回訪問させていただいたのは「CityMall」というソーシャルEコマースの企業になります。

Angad Kikla -CEOとDivij Goyalとの写真

2019年初頭にAngad Kikla、Divij Goyal、およびNaisheel Verdhanによって設立されたCityMallは、顧客エンゲージメントに対する独自のアプローチ(後ほど説明します!)により、投資家に非常に注目を集めています。わずか数か月で、同社は1日に50から750の注文に成長し、毎週50%ずつ成長しています。現在の成長の規模に基づいて、CityMallは今後12か月で1日あたり20,000件の注文に達する予定です。

 

そもそもインドのEコマース事情はどんな感じなの?

インドのEコマース市場は非常に大きなポテンシャルを持っており、数字の推移としては2000年代後半から伸び始め2016年に300億ドルを突破。2020年には1000億ドルに達すると予測されています。これだけ市場が伸びている背景としてはスマートフォン、インターネットの普及、決済システムや法整備などのハード面が整ってきたこと、Eコマースプラットフォームの増加が挙げられます(JETRO資料参照)

 

Kayoreena
スマートフォンの普及に追加し、インターネットの利用普及も大幅なユーザー増加をもたらした。特に2016年9月に参入したJIOが通話や回線の無料キャンペーンや低価格設定をした影響は大きいとされている。その他AiretelやVodafoneなど競合も同様の低価格プランを提供しはじめた。

2010年、1億人程度だったインターネット利用者は2015年に2億6000万人まで増加し、2022年までに5億人に達する予測がたっている。

 

インドのEコマース市場が伸びているのを踏まえた上で、CityMallが提供するEコマースプラットフォームは、他のプラットフォームとはどういった点が異なっているのでしょうか。

 

Angad
CityMallは、WhatsAppを介したPeer to Peerの紹介を通じて、特別割引のある精選されたライフスタイルおよび家庭用品を販売するサービスです。対象は主に、インドのTier2、3、および4の都市に属する2億人(特に女性)をターゲットにしています。

*Tier2,3についての説明は後ほど出てきます!

 

Peer to Peer=知り合い同士の紹介で作られるネットワーク

Kayoreena
このサービスの特徴「Peer to Peer」とはどういう意味ですか?

 

Angad
実はこのプラットフォームはグループ制のような形を取っており、人の紹介でしかプラットフォームの利用はできない(招待制)形になっています。

 

Kayoreena
どうしてそういった形をとっているのですか?

 

Angad
僕たちがターゲットとしているTier2やTier3の人たちというのは、実はまだオンライン決済やオンラインサービスに慣れていない人たちが多いんです。

オンラインサービスというのは、Tier1の街に住む人達で約80%の利用率なのに対し、Tier2、Tier3になってくると60%前後にまで下がります。理由は都市部と比べるとオンラインサービスが限定的で、行き届いていない現状もありますし、スマホの普及が遅かったため、そもそもサービスの利用歴が短く慣れていないと言う現状があるからです。

そのため、オンラインサービスといえども、最初はオフラインの知り合いの紹介から参加して貰う形を取っているんです。

 

 

Kayoreena
知り合いの紹介となると、安心感がありますもんね

 

Angad
僕たちのプラットフォームでは生活必需品に特化してものを販売しているのですが、紹介者も紹介された人もメリットを得られるビジネスモデルにしてるんです。

例えば、グループ購入することで価格の50%引きで購入できたり、グループのオーナーはその割引価格までコントロールできる権利を持っているんです。参加者が増えれば増えるほど、最大値引率を挙げられるレートのような仕組みも準備しています。

 

Kayoreena
つまり、仲間を集めて皆で買ったほうがお得ということですか?

 

Angad
そうです。そういった形を取ることで、まだオンライン決済に慣れていない田舎の人達のコミュニティを巻き込み、僕たちとしても安定的な顧客層を掴むことができるので一石二鳥です。CItyMallはお客さんたちが独自で作ったグループを管理するような役割を担っています。

インドの場合、ショッピングの7割は「目的を持った買い物」なのですが、残りの3割は「インフルエンサー」などの影響を受けており、いわゆるコミュニティやグループの長になるような人は、街の人達に影響力を持ってCityMallのネットワークを広げてくれるでしょう。

 

Kayoreena
中国の拼多多(Pinduoduo/ピンドゥオドゥオ)を参考にしているとのことで、ビジネスモデルはそっくりですね。

 

拼多多おさらい

・拼多多の多くの商品が、グルーポン形式での購入ができる。グル―ポン形式とは、複数のユーザーによる共同購入により、一つ当たりの商品の値段を引き下げて販売すること。

・共同購入のメンバーは、チャットアプリのWeChatで募ることができる(インドで言うWhatsApp)。友人にリンクを送り、共同購入を呼び掛けたり、送ったリンクをタップしてもらうだけでもバーゲン価格を取得できる商品もある。

・小さな都市や農村に住む中国人の多くは、物を安く買うことを重要視する。

拼多多(Pinduoduo/ピンドゥオドゥオ) | 中国ECプラットフォーム・特徴・メリット・登録方法・活用法より抜粋 

 

 

Kayoreena
これは余談なのですが、田舎の人達ほどオンラインサービスに慣れていないという話は、根強く残る現金決済の文化からも伺えるかもしれません。

 

 

 

仲介業者を取り除くビジネスモデル

Kayoreena
そんなに割引をしてしまったら、そもそもの利益はあまり生まれなさそうに思いますがどうですか

 

Angad
僕たちは仲介業者を通じず、直接企業とやり取りをしているので、それにより利益を生み出すことに成功しています。CityMallはブランドから生じるプレミアムを消去するために、ローカルのブランド製品および非ブランド製品に焦点を当てています。

インドではソーシャル・ネットワークサービスの利用が盛んです。たとえブランドがなくても、品質がよく高頻度で使ってもらえれば、確実に口コミとSNSで拡散されていき、必要とする人に届いていきます。

特にインドのユーザーが多いWhatsAppをプラットフォームとすることで、ユーザーの日常行動に自然と入り込むことができ、かなり効果が高いです。

 

Kayoreena
AmazonやFlipkartなどと違うやり方ですね

 

Angad
AmazonやFlipkartはマーケットプレイス型=消費者と出品者をつなぐビジネスモデルですが、自社で在庫を管理し消費者へ直接販売をするイベントリー型のオンラインサービスは外資系企業は参入できない形になっています。

そのためAmazonなどは大量買付・低価格・薄利多売でのやり方になりがちなので、そことは大きな差別化が図れています。

 

Kayoreena
先程から出てきている「Tier2,Tier3」の言葉の意味を改めて教えてもらえませんか。

 

Angad
インドでTier1,Tier2…とは、人口のサイズを表しています。Tier1は人口400万人以上の大都市、Tier2は400万人未満100万人以上,Tier3は100万人未満といったところです。

Tier1の街のほうが人口が多く街全体が発展しています。2,3の層はもう少し田舎です。

2016年頃のJIOの無料キャンペーンがきっかけで、Tier2,Tier3の街にもスマートフォンがここ数年で普及してきました。そのため、少しずつオンラインサービスの利用も増えてきています。

 

 

巨大なインドで起こるロジスティックの問題

Kayoreena
インドのオンラインショッピングで一番問題になりそうなのは『品物がなかなか届かない』ことですが、そのあたりの状況も教えてもらえませんか?

 

Angad
確かに、インドは日本と比べるとロジスティック(運送)の部分の課題は大きいです。ほとんどのオンラインサービスは、ロジスティックの問題がクリアできずに失敗していきます。

実際、インド国内でものを買うとき、1週間とか平気でかかってしまうのですが、そうなると、購入した人も気持ちが下がってしまいますよね。今欲しい!と思って買っても、品物が届く頃には気持ちが冷めてしまう。そうなると返品の原因になるんです。

 

Kayoreena
実際の返品率は高いのでしょうか。

 

Angad
何も施してない状態でサービスを提供すると35%〜40%の返品率になっていまいます。

 

Kayoreena
そのためにCityMallはどんな工夫をしたのですか。

 

Angad
僕たちはTier2,Tier3のターゲットとなる街の近くに小さなカスタマーセンターを作り、そこをデリバリーの拠点として在庫を管理するようにしています。そうすることでローカルのサポートを受けることができます。実際に運送も1〜2日での配達が可能です。

 

Kayoreena
エリアによって文化も言語も違いますし、地域に合わせたカスタマーサービスが必要になりそうですね

 

Angad
そうです。僕たちは広げすぎず、狭い範囲で確実にサービスを届けることで長期的な利用を担保したいと考えています。そのために工夫していることとして、何でもかんでもできると言わず、期待値を上げすぎないこと。取り扱う製品の数も増やさず、確実に届けられる範囲に狭めて対応しています。

 

 

これから伸びるインドのソーシャルEコマース

Angad
現在、メインでオンラインサービスを利用しているTier1(主に大都市に住む人達)も、まだまだ快適なオンラインショッピングの体験ができているとは言えません。既に5000万人近くはオンラインショッピングの利用経験があると言われていますが、満足度は高くないと言えます。

僕たちはそういったことを繰り返さないように、現在のSNSのネットワークと地域のコミュニティの特性を活用してマーケットを開拓しています。

 

今回取り上げたCityMall以外にも今日、Group型のソーシャルコマースは現在インドで注目されている分野の一つであるそうです。

現地のビジネスメディア liveMintによると、インドのソーシャルEコマースに関わるスタートアップは今年だけで1億5700万ドルの投資を受けています。これは2018年に投資された金額のほぼ2倍に相当します。

 

Eコマースで最も注目されているMeeshoはこれまでに1億9000万ドルの金額を調達しています。

 

Messhoの大きな特徴は、同プラットホームだけでなく、様々なソーシャルメディアを通して売買が行われる仕組みを構築している点です。ユーザーは自身の商品を自らPR・交渉する場としてFacebookやWhatsApp、MessengerなどのSNS・チャットアプリを活用しています。その意味で、MesshoはEコマースではなく、”ソーシャル・コマース”と呼ぶにふさわしいでしょう。

インド版メルカリ・Facebookバックの「Meesho」が1億2500万ドルの巨額調達ーーAmazon・Flipkartの次をいくソーシャルコマース、その手法とは

 

ソーシャルeコマースがインドの市場で非常に注目されており、企業はそのトレンドに合わせ、特にこれまでインターネットに触れてきていないユーザーのため、彼らに合わせた方法でのビジネスを提案するように工夫しています。

2019年5月のGoogleの調査によると、インドのスマートフォン検索の約7割は、小さな町からの検索であったことが報告されており、起業家たちはTier2,Tier3以下の小さな田舎町が十分なターゲットになることに気づいています。

そういった彼らが使いやすい仕組みを提供することが、インドにおけるソーシャルeコマースの正攻法と言えるでしょう。

LiveMintより引用

 

インドにおいてのソーシャルEコマースの今後は、中国と同様の傾向をたどる中で、地域差や文化、言語、慣習の違いなどさまざまな要素を考慮しつつ、スピード感を持ちつつ確実に巻き込んでいけるかどうかが鍵となりそうです。人々の日常に最も大きなインパクトを与えている分野であることは間違いないので、このサービスによる人々の消費行動の変化にも注目です。

 

Kayoreena
今回はCityMallを例にインドの最新ソーシャルEコマース事情についてまとめてみました。もし皆さんの中でもっと興味ある方は、ぜひお問い合わせください!
The following two tabs change content below.

KAYO OSUMI

函館生まれ 北海道大学医学部卒。2016年9月よりインドの現地採用で就業。当時よりインドに進出する日系企業向けに、インド現地の話題やビジネスに特化した記事を合計600本以上執筆してきている。2018年1月から東京拠点に移し活動を続ける傍ら、現在は株式会社メルカリのインド人・外国籍エンジニアの就業支援。引き続きインドのマーケティング、調査、人材採用を強みとする。
Kayoreena
もしこの記事が役に立ちましたら、ぜひ皆様のSNSでシェアしてください!◎