インドネシアのスーパーアプリGojekがインド拠点でブランドを築くための施策

みなさんこんにちは!インドブロガーのKayoreenaです。

本日はアドベントカレンダー5日目です。12月の頭から25日まで連続でインドに関する記事を更新しています。

(サッカーワールドカップの試合のため、更新が遅くなりました)

本日のテーマは「インドネシアのスーパーアプリGojekがインド拠点でブランドを築くための施策」についてです。

みなさん、インドネシアで有名なスーパーアプリのGojekをご存じでしょうか。

Gojekは、ジャカルタに拠点を置くインドネシアのオンデマンドマルチサービスプラットフォームおよびデジタル決済技術グループです。2009 年にインドネシアで消費者を宅配便や二輪配車サービスに接続するためのコールセンターとして最初に設立されました。現在、20以上のサービスを提供するスーパーアプリとなっており、ベトナム、シンガポール、タイ、フィリピンにも進出。インドネシア初のユニコーン、かつデカコーン企業となりました。

今年インドに開発拠点を設立した日本のメルカリと同様、Gojekも2016年にインドのバンガロールに開発拠点を設けています

Gojekとメルカリの共通点は、共に現地にはプロダクトを持っていないと言う点です。

Gojekは現在東南アジアを中心とする5カ国で展開されていますが、インドには製品はありません。そのためGojekもメルカリも、インドで開発拠点を成功させるために、まず我々が何者かと言うことを正しく知ってもらう必要があります。

Gojekは2016年にインドに開発拠点を設立するために、同じくバンガロールに進出しました。6年先輩の彼らは、もうすでにバンガロールで圧倒的なブランド力を持ちます。彼らはどのようにして、インドネシアのユニコーン企業としてのブランドを現地で築いていったのでしょうか。

99パーセントにはわからないメッセージで1パーセントを採用

2019年、Gojekはバンガロールにおいて、一般の通行人には不可解に映ったかもしれない一連の屋外広告を展開しました。

この看板のメッセージは、Clojureという高度に専門的で、括弧を多用するプログラミング言語をもじったものでした。

こちらの画像が示すメッセージはわかるでしょうか。

これは多くのプログラマーが尊敬するソフトウェア エンジニアリングに関する本「The Mythical Man-Month」を引用しています。この本の中心的な前提は、マネージャーとエンジニアの間の断絶と、マネージャーが「人月」などの指標に依存していることです。

これは99%の一般の方には理解されない内容になっていますが、いわゆるエンジニアにはユニークなメッセージとして届く内容になっていました。このメッセージを通じ、Gojekがエンジニアリングをいかに大切にしているかを強調したいという背景がありました。

一部の広告は意図的にマニア向けで、一部の人しか理解できないものがありますが、それは問題ありません。私たちはエンジニアを求めており、たとえ理解できなくても、研究するのに十分な好奇心がある場合でも、一緒に働きたいと思う人々のスイートスポットを見つけます。

Scaling people for a #SuperApp より

Gojek では、ソフトウェアを応用芸術と見なしています。美しく質の高い仕事が、スケーラビリティと売上高および最終利益への影響に直接つながる、稀有な職業です。インドでは、アート、クラフト、デザイン、そしてもちろんエンジニアリングなど、頭と手で物を作る職業の価値を過小評価する傾向があります。私たちは手を差し伸べて、Gojekが違うことを知らせる必要がありました。

Sidu Ponnappa 、SVP エンジニアリング Gojek India

これらのキャンペーンを実行する前に、複数のラジオチャンネルや現地のローカルメディア、Uberの車内広告など、あらゆるメディアのベータ テストを非常に少額で行いました。そこでのデータ分析は徹底的に行なっていきました。

私たちは配車サービスなのか?それとも何者なのか?

配車サービスとしてスタートしたGojekでしたが、食品配達やデジタルウォレット、発券など20以上のサービスを展開していきました。しかしこれは同時に、Gojekが何をしているのかを伝えることをより複雑にしていきました。そこでGojekチームは、自分達のことを「スーパーアプリ」としてポジションを確立しました。

Gojekは当時、インドの映画館の1分20秒の広告を通じ、自分達がスーパーアプリであるメッセージを伝えるためにビデオを準備しました。

これは社内でもかなり調整を行い、作り上げられたものであり、同社社員の中でも非常に好評なものであったといいます。こうしてインドにおいてGojek=スーパーアプリというポジションを明確に示していきました。

製品はなくても体験はできる ーインドでのイベントブースー

現地のスタートアップメディアのイベントの催しでは、Gojekのブースを設けてPR活動を行いましたが、そこでもGojekらしい工夫がみられました。カスタムVR ゲームを構築し、SuperApp T シャツを配布し、GOJEK ストーリーを使った屋台のコンセプト迷路を構築しました。

VR ゲームは約15 日間で作成されました。今後のインドのイベントにおける主要コンテンツとして活用されるようになりました。

Scaling people for a #SuperApp より引用

もちろん、こういったさまざまなユニークな施策は一部ですが、それ以外にも、Gojekのエンジニアリング組織がどのような文化であるかという発信や、そもそも私たちは何をしている者なのかという話は、特に初期の頃は粘り強く行なっていたといいます。こういった日々の地道な活動と、それにレバレッジをかけた候補者に刺さるメッセージングは、認知度やブランド向上に繋がっていくでしょう。

失敗は私たちのブログで繰り返されるテーマであり、その失敗こそが、成功と真の達成感を与えると信じています。優秀な人材を引き付けているのであれば、リスクを冒して間違いを犯しても大丈夫であることを彼らに知らせたいと思います。

Adithya Venkatesan / Head of Marketing Gojek India

 

他にもGojekの会社ブログでマーケティング施策について触れられているので参考にしてみてください!これから同様にインドで開発拠点を設立する予定の日系企業や、サービスを現地にもたない企業の方にとって、参考になると幸いです。

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KAYO OSUMI

函館生まれ 北海道大学医学部卒。2016年9月よりインドの現地採用で就業。当時よりインドに進出する日系企業向けに、インド現地の話題やビジネスに特化した記事を合計600本以上執筆してきている。2018年1月から東京拠点に移し活動を続ける傍ら、現在は株式会社メルカリのインド人・外国籍エンジニアの就業支援。引き続きインドのマーケティング、調査、人材採用を強みとする。
Kayoreena
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