私は就活をしたことがない。vol.475

私は就活をしたことがない。

 

先日、大学生の後輩から進路相談を受けた。私がインドで働いていたことに関してとても興味を持って、自分もそういう進路を歩みたいから話を聞きたいと。

 

正直、こういう相談話はよくある。笑 

10人に私の話をして、本当に海外に行く人なんて1人いるかいないかだということも知っている。

その時、私が彼ら・彼女たちに伝えるときに気をつけてることがある。

 

その話は別として、今日のタイトル「私は就活をしたことがない」について。

私は就活をしたことがない。これはどういう意味かというと「一般的な学生が経験する「新卒の就活」を経験したことがない」という意味だ。

なぜなら、私のスタートは地方上級公務員だったからだ。

 

私の世間に対する感覚は実はかなりずれていて、父親が公務員だったこともあり、大学を卒業するまで「先生」「医者」「警察官」「看護師」「弁護士」「消防士」「その他サラリーマン」で世の中は動いていると本気で思っていた。完全に東京アカデミーに洗脳されている感じだ(笑)

 

経営者やフリーランスなんて言う言葉は1mmも知らなかった。大企業、中小企業、ベンチャー企業、そんな枠があることも全然知らなかった。

 

「世の中の多くの人は、大手企業に入って高給取りになって安定したい」ことや「たまたま受かった企業で何十年も働いている人も多い」ということも知らなかった。

 

たまに聞く友達の就活話で「その他サラリーマン」という世界が存在することはわかったが、私は「サラリーマンは景気に左右されるかわいそうな人達。公務員はずっと安定で、良い職業なのよ」と教えられていたから、くだらない座学の試験でも、努力で点数さえ取れば就職できる公務員が最高だと、本気で思っていた。

 

周りの友達は看護師志望が多かったので、どこの大学病院に就職するかという話で持ちきりだが、看護師は引く手あまたなので就活で苦労することはない。当時は国家試験と実習のほうが忙しかった。

 

私は他の学部にも友達がいたが、恐ろしいほど皆の進路に興味がなかった。当時から「私は私の道を行く」という信念が強かったのだと思う。

 

看護学部にいながらも、将来海外で活躍する自分をイメージしながら、他の人と違う準備や勉強や活動をすることはすごく大変だったから、他人がどこに就職しようが、どんなエリートになろうがどうでもよかったのだ。

 

当時大学の友達が自慢げに「大手銀行に就職できた」と教えてくれたことがあったが、それがすごい倍率を勝ち抜いてエリート街道を掴み取ったことの自慢だということにも1mmも気づかなかった。

 

そこからいろいろあり、私は無事念願だった公務員としての就職も達成したが、初めて泳いだ「社会」という大海で、サメやクジラ、タコや熱帯魚、深海魚にイソギンチャク…とにかくいろいろな生態系を知り、自分の恐ろしい具合の無知さを知り、ひとつずつ身をもって失敗し、その度に勉強し、なんとか自分の意志でここまでたどり着いた。

 

その軌跡に後悔はないが、もし私の両親が企業に勤めるサラリーマンで『世の中にはさまざまな「業界」が存在し、これから伸びる産業はこれで、いま稼げる産業はこれで』そんな話を食卓で話していたら、私の人生は少しは変わったのかも知れないと思う。

 

(まあでも私が悪いのであり、ここでの教訓は「その他サラリーマンの世界も興味を持って調べてみるべきだった」という反省から「知らない世界は素直に教えてもらう」ということを学んだ)

 

こんな私は見ての通り、新卒の就活事情なんて1mmもわからないのだ。だから企業が新卒の子に何を求めているのかも知らないし、就活生が本当は何で悩んでいるかもしらない。なぜなら経験したことがないからだ。

 

私は新卒の時、東京と神奈川の公務員試験しか受けてなくて、両方受かった。2社しかエントリーせず両方受かり、世の中を知らない代わりに自分の自己肯定感も傷つけられなかった。

 

はじめは大手企業に言ったほうが良いよという大手企業出身の人のロジックも、若いうちからリスクを取れというベンチャー企業のロジックもわからない。なぜなら公務員だったから。私が言えることは「公務員でやめても仕事はいくらでも挑戦できるよ」ということくらいだ。(まあでも3年以上いたら厳しいとは思うが)

 

そんな私が大学生のアドバイスをして良いのだろうか。こんな私に、何を言う権利があるのだろうと、皆に話す度に考えるが、そのかわり私が提供できることは何か考えた。

 

それは、あらゆる世界で活躍する人たちの意見だ。

 

世の中にはいろんな人が存在する。

 

大手企業に属さなかったことを劣等感に感じながら、自分の会社でめちゃくちゃ結果を出している人もいれば、借金数百万から逆転で人生を切り開いている人もいる。ベンチャー企業はもう勘弁で、しばらく大手で働きたいという人もいる。月5万で生活できる海外に移住し、フリーランスで悠々自適に生きている同世代もいる。旅をしながら仕事をしている人もいる。

 

私が言えることは「色んな人がいるのだから、いろんな生き方を見て、自分で進みたい道を決めたら良いよ」ということだ。

 

そして、最後の決断はその人自身でさせること。「@@は@@がいいよ」とは言わない。決めるのは自分自身だから。ここはすごく重要だと思っている。

 

新卒のうちから「自分の歩む道を正解にする」ということは厳しいのかも知れないが、世の中公務員しかいないと思っていた当時の私よりマシだと思う。

 

私はどんな道を取っても正解にする考え方は教えてあげられるが、皆の最善の道を決めてあげることはできないし、新卒就活の勝ち方もよくわからない。ごめんね。

 

とにかく皆、いろいろ言ったけど、失敗して改善しながら、自分の道を歩んでいってほしい。

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KAYO OSUMI

函館生まれ 北海道大学医学部卒。2016年9月よりインドの現地採用で就業。当時よりインドに進出する日系企業向けに、インド現地の話題やビジネスに特化した記事を合計600本以上執筆してきている。2018年1月から東京拠点に移し活動を続ける傍ら、現在は株式会社メルカリのインド人・外国籍エンジニアの就業支援。引き続きインドのマーケティング、調査、人材採用を強みとする。
Kayoreena
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