みなさんこんにちは!Kayoreena(@kayoreena1021)です!
今回は「コロナに負けるな!応援企画」と題して、世界を舞台に活躍する様々な日本の方のインタビューをお届けしていきたいと思います。
この記事は私なりに混乱する今日、何かできることはないかなと思い、何名かの方に取材をお願いして書かせていただいたインタビュー記事になります。
あえてこの時期に、こういった企画を書くことで、コロナに打ち勝ち、また皆が普通の日常に戻り、世界で活躍する姿を取材したいという強い思いを持って発信します。
本日のゲストは演劇・ダンスの海外ツアーマネジャー(27ヶ国/59都市歴訪)を経験されてきているYokoさんです!
演劇・ダンスの海外ツアーマネジャー(27ヶ国/59都市歴訪)l 世界を旅して見てきた景色と、各国のアート事情、留学情報を発信 l 慶應(文・美美)→劇団→外務省所管独法→開業→1月〜育休 / 9月〜ロンドン大学前期博士課程に留学予定 l ISPA(国際業界団体)で日本人唯一のGlobal Fellowship受賞者
この企画を打ち出した時にYokoさんからメッセージをいただきました。
今回は、私達の先輩でもあるYokoさんのこれまでの経験から、感じたことや学んだことをいろいろお伺いしたいと思います!
Contents
Kayo : Yokoさん、本日はよろしくお願いいたします!自己紹介でも紹介させていただきましたが、Yokoさんはこれまで舞台の海外公演専門のアートマネージャーでツアマネとしてこれまで27ヶ国でお仕事の経験があるんですよね。もう少し具体的なお仕事の内容を教えてもらってもいいでしょうか。
Yoko : 例えば日本の劇団の海外公演(VISAの手配や宿泊先、会場など)をアレンジしたり、日本に海外の方々を呼んでくるときのツアーを企画したり、様々でした。
Kayo : Yokoさんはそもそもこのお仕事を選んだきっかけは何だったのでしょうか。
Yoko : もともと、演劇やダンスにすごく興味があったんです。多くの人が、こういう分野に興味を持った場合「女優」や「アーティスト」を目指すと思うのですが、私の場合は才能がないなとと思って諦めてしまっていたんです。
自分は一生、この業界で仕事をすることはないだろう…と思いながら、大学も普通に通い、就職活動を行い、当時は学校の先生になろうと思っていました。
実際に学校の先生になった後に、心のどこかで「これはもしかしてやりたいことと違うのかも」と思うことがありました。
そんな風に過ごしているうちに、しばらくして、自分が好きだった劇団やダンスカンパニーが、深刻な財政難で劇場から追い出される企業が出てきたというニュースを見たんです。
私はその時に「自分が大好きだったものから離れてしまったことで、その業界の活性化に貢献できていなかったこと」を悔やみました。私はたくさんの人を元気づける舞台やダンスが本当に好きだったんです。その大切な存在を食い止めるためにも、私はこの業界を盛り上げたいという自分の思いに気づきました。
『業界を支えたい』転職に至った背景
Kayo : その気付きは大きなものですね。その後は、どのように業界の方に関わるようになったのでしょうか。
Yoko :そこで私は、いわゆる裏方としてこの業界を支えたいと考え、事務職として転職しました。劇団の経営に関わって、業績を良くしていきたいという思いがあったのですが、業界に関われるのなら、どんな役割でもいいと思っていました。そこで書類を送ってみたら(後に10年所属することになる)1つの事務所に採用してもらえることになりました。もともと給与もそんなに高い仕事でなかったので、うまくいかなかったら次に移ろうと思っていたのですが(笑)給料を払うと言われ続け、気づけば10年が経っていました。
Kayo : 10年続けると幅広く業界のこともしれそうですし、かなり専門性が磨かれますね。
Yoko :チケットのマーケティング等に興味があったのですが、面接の時に「君、英語できる?」と聞かれて(ここでできないと言ったら、入社できないかも…)と思った私は「できます!」と答え、
その結果いきなり外国の演出家担当に抜擢されてしまったんです。
Kayo : それは大胆な配属でしたね!
Yoko :そこから所属する劇団の海外公演や外国の劇団の日本での公演など、ずっと国際事業のサポートを中心にやってきていました。慣れない英語のスタートでしたが、自分の好きなことを仕事にできていて、毎回必死でしたが楽しい日々でした。
劇場の公演チケットを販売したり、リハーサルの準備をしたり、一見華やかに見える私の仕事は、ありとあらゆる雑用を集めた仕事でした。例えば特殊な機材の管理をするため、港の倉庫に自分たちで機材を運んだり(笑)
アーティストというのは、アートを管理されることを嫌うんですよね。彼らは何もないところから新しい概念を生み出すことが役割なので。そんな中で、そのパフォーマンスを形にするために、私達がマネージメントをする役割でした。
状況は一刻一刻変わりますし、例えば苦手なお金の交渉とか、嫌がられたとしても、それに価値をつけるために、私達が裏で「管理」しなくてはいけなくて。そういった難しさも含め、お客様に作品を届けられたときは、すごく大きな達成感がありましたね。
私が「芸術」を好きな理由
どうしてYokoさんは、こういった舞台やパフォーマンスに興味を持ち始めたのでしょうか。
Yoko :私は生まれが東京なのですが、東京の文化的な豊かさにたくさん触れて、育ってきたことがあると思います。子供の時から、たくさん東京の文化を当たり前に経験してきました。例えば東京って、それぞれの街が1つの文化圏を持っていますよね。
オーケストラやミュージカル、歌舞伎や劇場も、東京には溢れていますが、それは全国当たり前はなく、東京に集中していたということを大人になって気づきました。今思うと、すごくラッキーだったんです。そういった囲まれた環境が、このキャリアにつながったと思っています。
Yokoさんはこの劇団の仕事を続けた後、企業からフリーランスの形態に移行されていらっしゃいますよね。何かきっかけがあったのでしょうか。
Yoko:途中から東京の劇団の仕事と、結婚して移り住んだ神戸を行き来していたのですが、家族との時間やバランスを考えたとき、フリーランスに形態を変えたほうがより捗ると思ったんです。幸い、同じ業界で10年以上やっていたので、その自分の考えを話すと、お仕事を一緒にやろうと言ってくださる方がいらっしゃって、その形態に変えました。現在は育休で、少しお仕事を控えめにしています。
結婚、出産が働き方に与えた影響
Kayo : 出産して、何かお仕事のやり方に変化はありましたか。
Yoko : この業界では、劇団のツアーにつきっきりになることがあったり、結婚して子供がうまれると、仕事をやめてしまう人もいます。私自身も、仕事に対する考え方は子供が生まれてから大きく変わりました。
女性は特に「仕事か家庭か」選ばなくてはいけない悩みというのは、誰にでもありますよね。私はずっと仕事が大好きだったので、仕事を頑張ってきましたし、この「どちらか選ばなくてはいけない」という考え方は正直受け入れられませんでした。
ただ、事実として、仕事は休んでも復帰できるのですが、子供を産むためにはタイムリミットがあるので、あるタイミングで決断しました。
最初は、これまで続けてきた仕事を中断して、キャリアが途切れてしまうことは「立ち直れないかも」と思ったのですが、子供を授かった時に先輩が言葉をかけてくれて「Yokoさんは今後、人生をもっと相対的に見れるようになるよ」と言われた時に、少しキモチが楽になったんです。
確かに子供ができてから「人生の喜びは仕事だけではない」と思えるようになったし、これまで第一優先だった仕事のバランスに、家族との時間の割合が増えても「それでもいい」と思えるように変化しました。私はこれまで、本当にいろいろな人が支えてくださって恵まれてきたと思います。
コロナウイルスは芸術をどう変えるのか
現在、コロナウイルスの状況で特にこういった劇場公演などはたくさん、中止や延期の状況に置かれていて非常に厳しい状況が続いていると思うのですが、この状況をYokoさんはどのように捉えていますか。
Yoko:いま、コロナウイルスの感染防止のために、お客様が劇場に足を運べない状況が続いていますが、今たくさんの劇団や劇場が、新しいやり方に挑戦していますよね。例えばライブストリーミングをしたり、オンラインを活用した方法を取り入れてます。
今後は、お客様が会場に来て、パフォーマンスを見るという形は、テクノロジーが大きく変えていくのかなという可能性も感じました。
実は私の仕事「ツアーマネージャー」も、トレンドとしてはなくなっていく方に向かっていると思うんですよね。数年前から、ヨーロッパでは「ツアー公演をやめよう」という声が上がってきています。背景として、飛行機に乗って人が移動することによる環境汚染(燃料の消費)やコストが、良いものではないよねという意見があがっているからです。
例えばプロの振付が、オンライン電話を通じて現地のメンバーに作品を振り付け、仕上げることで、実際はそのプロの方が持っているアイディアは伝えることができるんですよね。
また、これまで「誰かに頼まなくてはいけなかったこと」も、テクノロジーがその手間を省略してくれるようになりましたよね。一昔前は、海外に旅行に行くにも旅行代理店等の協力がないと難しかったですが、今なら自分たちでチケットも宿も、手配できるようになりましたよね。
そういった「自分たちでカスタマイズできる時代」が来たり、人々の芸術に対する向き合い方も、テクノロジーが大きな変化をもたらしていると思います。
Yokoさんは9月後半から、イギリスへの留学も検討されているとのことですが、現在のコロナウイルスの状況を見ると、この先が不透明ではありますよね。
Yoko : はい。これまでは私は、アカデミックな背景がなくこの仕事を続けてきたのですが、もう少し「どうやってある国の文化が受け入れられているのか」とか「どうやって人を魅了していくのか(ファンを増やしていくのか)」ということを体系的に学びたいなと思い、政治の学問の中で「文化と外交」を学べるイギリスのコースを選択することにしました。現在は準備はしつつ、様子をみています。
芸術がたどってきたこれまでの歴史
Yoko : 今回のコロナウイルスの状況を受けて、人々の不安や焦燥感というものが浮き彫りになりましたよね。そういった世論というのは、実は芸術が作り出してきたという視点もあるんです。
人は誰もが「争いごとはしたくない。平和でありたい。」って心から願っていると思うのですが、気づかないうちに、その時代の偏った世論や、雰囲気や空気に巻き込まれていくものなんですよね。現在、インターネットやSNSなど、人の心に影響を与えるツールが増えている分、そういった「雰囲気」というのは生み出されやすくなっていると思います。
日本の舞台芸術には反省の歴史があります。昔、ちょうど太平洋戦争があった頃、人々の心を戦争に向かわせるための表現をするアート作品が国から奨励されて、お金を払ってもらえるという歴史があったんです。何かと競ったり、戦うキモチを強く持つようにと、そういうメッセージを持った作品が推奨される時期がありました。それは戦後になり、大きな反省として語り継がれています。
戦後の演劇というのは、そのときの反省の上に成り立っています。芸術は大きな社会の変動に対して、常に批評的な視点を持ち、ときには大きな流れに逆らっていても世の中に多様なメッセージが存在する余地を示していくものだと捉え直されたんですね。
芸術は新しい気付きに導くメッセージ性を持ったものだと思うんです。私はそのために、ネットやSNSの活用には大きな可能性を感じています。
Kayo :そういった芸術の背景は知らなかったですが、より多くの人がネットやSNSで触れられるようになったからこそ、そういったメッセージ性と言うのは重要になりますよね。
Yoko : 業界としても、たくさんの若い人にこの仕事を知ってほしいですし、業界全体が産業として底上げしていかないといけないなと思っています。私は学生時代にたくさん作品に出会い、作品をを通じてより遠くの人に何かを届けていくことの大切さを実感しました。アートを通じて、世の中が平和になると良いなと思っているんです。
外国の方で、日本の文化が好きと言ってくれる人はたくさんいるんですよ。もしなにかの作品がきっかけだったとしても、それで「日本を好き」と言ってくれたら、その好きな国と戦争をしようという考えには、結びつかないですよね。
そうやって作品を通じて「あの国が好き」と行って貰える仕事をすすめていきたいんです。そういう関係性があれば、憎しみや戦いは生まれないと思っています。アートに限らず、外国との関係性づくりは、国造りだと実感できる仕事だと思います。私はそういうものに関われるこの仕事を、若い人にも知ってもらいたいと強く思っています。
Yokoさん、ありがとうございます!!
【編集後記】
今回のインタビュー記事の中で編集に最も時間がかかった記事でした。Yokoさんのこれまでの経験や、芸術の歴史的な背景など、私自身が知らなかった話もたくさんあり、学ばせていただくことが多いインタビューでした。
年齢を重ねると、一般的にはいろいろなことに挑戦しにくくなると思っている人は多いと思いますが、一つ一つ積み重ねていけば、むしろ人生の可能性が増え、世界を広げる機会が増えていくのかもしれません。Yokoさんの想いを大切にし、目の前の仕事を信念を持って取り組み姿勢を見て、そんな風に感じました。
皆様、コロナウイルスの流行は、まだ終わっていません。引き続き制限のかかった生活が続きますが、どうか安全にお過ごしください。皆様に普通の日常が戻り、また世界で活躍する日本の方がたくさん増えることを願い、このインタビュー企画を終了させていただきます。
今回、インタビューにご協力いただいたすべての皆様、本当にありがとうございました!
KAYO OSUMI
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自分が第一線を退くにあたって、若い人に舞台の裏側の仕事について知ってもらえる機会をいただけたら幸いです。