スタートアップ激戦区 インドのエンジニア採用事情 -2022年バンガロール編-

みなさんこんにちは!インドブロガーのKayoreenaです。

先日正式に発表になりましたが、私が所属しているメルカリがインドに正式に法人を設立し、本格的な活動がスタートしました。

メルカリが2022年、インドのバンガロールに開発拠点を設立することを発表したのがゴールデンウィーク明けだったため、それから1ヶ月半ほど遅れて、法人設立の発表ができました。インドのご存知の方は想像できると思いますが、この法人設立の手続きもそんなに簡単にはいかず(笑)右往曲折いろいろあって、ようやく正式に設立が完了したという形になります。

私は今年の頭からこのプロジェクトに本格的にアサインされていますが、6月現在、現地には2ヶ月ほど滞在していろいろな準備を進めてきました(今後も滞在予定)プロジェクトが始動してからなかなかのスピード感ではないかとは思います。

さて今回の記事では、この半年間で進めてきた現地での採用活動を通じて分かった「インドのエンジニア採用事情」についてわかる範囲で共有したいと思います。

今後、インドでエンジニアを採用してみたいという企業の方はぜひ参考にしてみてほしいです。

Contents

前提:そもそもなぜインドはエンジニア大国として有名?

メルカリインドオフィス(立ち上げたばかり!)でインターンのShivamと

そもそもなぜこれだけインドはエンジニア大国として注目されているのでしょうか。ここでは2022年にメルカリで行ったインド開発拠点設立に関するメディアブリーフィングで発表された内容をもとに説明します。

1.エンジニアの数そのものが多い

もうすでに有名な話でもありますが、インドでは毎年、約150万人の工学系の学生が卒業しており、世界の理工系学位の取得者数に占める割合がインド20.6パーセント、日本1.6パーセントとなっています。その多くは、自身が学生時代に学んだ工学知識や英語力を武器に、世界的に有名な米国IT企業への就職を目指す傾向があります。

参考:世界で活躍するインド高度人材を、日本企業競争力強化の即戦力に

2.スタートアップ大国

さらにインドは近年、スタートアップ大国としても世界的に非常に有名です。インドの新規ユニコーン企業数は2021年だけで42社も出ています。

今年の5月には100社目のユニコーンも誕生しています。これはどんな背景があるかというと、簡単にいうと優秀なインド人の起業家マインド(日本では大企業勤務がステータスとされますが、インドでは自ら業を起こすことが優秀であるとされる考え)や、コロナ禍においてインド市場への投資家の期待が集まり、投資金額がここ数年で一気に拡大したという事情があります(2022年現在、この傾向はやや落ち着いており、一部のスタートアップではレイオフがされています)

こういった背景からも、インドはエンジニアが活躍する風土が整っています。

参考:インドがIT大国と呼ばれる理由

ではここから本日のテーマである「スタートアップ激戦区 インドのエンジニア採用事情」について私の考えを整理していきます。

結論:エンジニアはたくさんいるが「良いエンジニア」を採用するのは難しい

今日の結論はこれです(笑)これだけ覚えて帰って行ってもらえると良いです。

現地のインド出身のリクルーターや、採用に詳しい人が声を揃えていう呪文のような結論が「エンジニアはたくさんいるが「良いエンジニア」を採用するのは難しい」です。

これはどういうことかというと(そのままなのですが)エンジニア大国ということで、候補者の数は多いのですが、実際にプロダクト開発で即戦力になったり、大きなチームをまとめるマネージメントスキルと持っているなど、そういった(いわゆる)スキルの高いエンジニアというのはどこの企業もほしいため、採用はとても難しいという心構えが必要です。

もしあなたの企業が採用ページを公開すれば、応募が全く来ないということはないでしょう。インドの採用活動で使われているプラットフォームで一番活発なのはLinkedInです。これは私が社内に在籍するインド人エンジニア20名程度にアンケートを取った際も満場一致でLinkedInが支持されておりましたし(2位は口コミ)私もこの数ヶ月LinkedInを運用してきて、ほぼ毎日何かしらインドの候補者からDMが届くくらい、LinkedInのインパクトはすごいです(もし今後海外採用をしたいなら、今すぐLinkedInを開設して英語での運用を始めてください!)

しかし、届いたDMから実際に採用に至るケースは何ケースあるでしょう(そもそも毎日DMが届いても、正直見てられません)本当に優秀な人は、むしろ私たちからDMを送らないといけません。

もうこれはどこにおいても言えることですが、優秀なエンジニアはどこの国も、どこの企業もすごくほしい状態です。

コスト削減を目的にすると辛い

海外拠点開発ときくと「オフショア開発」をイメージする方も多くいるかもしれません。オフショア開発とは一般的に外部委託のような形態を取っており、本社(日本)の開発業務などの一部外国に依頼するという開発です。この手法では一般的に、コスト削減が目的とされる場合が多く、そのためこれまでは日本より物価の安いアジアの地域が拠点先として注目されてきました。

しかし今回のメルカリのインド拠点開発は、この形態とは全く異なります。

Kayoreena
よく「オフショア開発をするんですね」と声をかけられることがありますが、全く違います笑

メルカリの場合、グループで行っている開発に、インドのメンバーも同じチームや工程に入って行うものなので、例えば採用の基準を甘くしたり、役割が変えられたりすることもありません。採用の基準が変わらないということは、引き続きスキルの高いエンジニアを採用していくため、当然報酬もグローバル水準にならざるを得ません。

上記の様に、特にインドのマーケットにおいてはスキルを持ったシニアタレントの需要が高騰しており、そのため、その層の報酬レンジは、正直日本のそれとほぼ変わらなくなってきているというのが現状です(この記事では具体的な数字は公開しませんが興味ある方は調べてみてください笑)ジュニア層に関しては、国の人口動態の特徴からも数が非常に多いため(ジュニア層のエンジニアの数は非常に多い)日本の給与相場と比較すると給与の幅は広くなっています。

また、我々の様に開発拠点やスタートアップの本社をバンガロールに置く企業は非常に増えているため、どの企業も報酬以外のベネフィットもたくさん準備しています。それらは全て企業のコストになります。

会社が何をしているか?より、入ったらどんなメリットがあるか?が大事

これもインド(というかアジア圏)で採用する上で非常に重要な心構えですが、エンジニアはあなたの会社がどんな事業をやっているかより、入ったら自分のキャリアにとってどんなメリットがあるか?を非常に気にしています。

もちろん、どんな事業をやっているかということも重要ですが、それ以上に「報酬がいくらか」を伝えることが重要であり、これは日系企業はあまり得意ではないかもしれません。

日本の企業の発信は「どんなミッションを持って、どんな事業をしているか」という発信が強いと思います。それは悪いこととは言いませんが、候補者は「この企業は入ったらちゃんと報酬を支払ってくれるのだろうか」ということを気にしています。そのため私も、インドの友人に開発拠点の話をしたときに、ほぼ必ず「サラリーレンジを教えてほしい」と聞かれていました。そこがクリアでないと、友人にも紹介できないというフィードバックをもらうこともありました。

先日Shivamと話したときに、インドのエンジニアは市場からの需要が非常に大きいため、シンプルに条件がいい方に行きたいと言っていました。エンジニアは最初の6ヶ月くらい、その会社にロイヤリティーを強く持つことはなく、まずはその会社が自分達のためにどんな機会や報酬を提供してくれるか見極め、その後に徐々に貢献度を強くしていくという気持ちの変化があるそうです。そのため、会社が合わないと思えば、すぐに転職します。機会はたくさん溢れているからです。

報酬や福利厚生の話を最初からクリアに伝えることは非常に重要ですし、その面において市場で一定の競争力を持っておくことも非常に重要です。

リファーラルがとても重要

この開発拠点のプロジェクトが立ち上がった際に、社内にいるソフトウェアエンジニアを中心に現地の採用マーケットについてヒアリングしたのですが、LinkedInの次に支持されていた採用手法が「口コミ」でした。

インドのエンジニアの中での口コミは非常に重要であるため、まずは社内のメンバーが会社で幸せに働いている環境づくりが大切です。それができていれば、自然と社内のメンバーが採用に協力してくれます。最初は現地における拠点の評判はないため、すでに我々を知ってくれている社内のメンバーが一番重要なアンバサダーになってくれます。

また、現地のインナーサークルに入ることも非常に重要です。インドにおいて、熱意を持った良いメンバーは非常に協力的であるため、全体の成功のためにいろいろな情報を共有してくれます。

TwitterやLinkedInなどのSNSツールと一緒に、現地のローカルコミュニティに足を運ぶことも非常に重要なので、そういったキーパーソンとつながり、情報を共有してもらえると採用活動のプラスになると思います。英語での発信や、現地でインフルエンスのありそうな方に積極的に絡んでみてください。

最後は金ではない

コストの話や福利厚生の話ばかりすると、結局いい給与を支払わないといいエンジニアを採用できないのか…と絶望してしまいそうですが(それは一定あります)最後はお金が決定理由にはならなかったりします。

一番重要なのは「その会社が面白い機会を提供してくれるか」「情熱を持って働ける環境なのか」にかかっています。

めちゃくちゃエキサイティングな機会と、相場より少し良い報酬」これがベストアンサーといえます。

お給料や福利厚生を大切にする文化はもちろん強いのですが、例えば給与が少し違ったくらいで、それを理由に企業を選んだりはしません。既に競争力がある報酬や福利厚生が準備されていれば、そこを前提として、最後は「機会」の勝負になります。

より面白く、裁量権があり、成長性がある機会をエンジニアは求めているため、そういった魅力的な環境であるかどうか、それを正しく伝えられるかどうかが重要になります。

 

今日はここまでのインドのエンジニア採用の所感についてまとめてみました。また現地の出張の様子なども更新していくのでTwitterもフォローいただけると嬉しいです!

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もし今後採用を検討されている方はぜひ参考にしてみてください。

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KAYO OSUMI

函館生まれ 北海道大学医学部卒。2016年9月よりインドの現地採用で就業。当時よりインドに進出する日系企業向けに、インド現地の話題やビジネスに特化した記事を合計600本以上執筆してきている。2018年1月から東京拠点に移し活動を続ける傍ら、現在は株式会社メルカリのインド人・外国籍エンジニアの就業支援。引き続きインドのマーケティング、調査、人材採用を強みとする。
Kayoreena
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