みなさんこんにちは!インドブロガーのKayoreenaです。
先日正式に発表になりましたが、私が所属しているメルカリがインドに正式に法人を設立し、本格的な活動がスタートしました。
ついにインド🇮🇳の方に正式に法人が設立になりました!
ここからがますますチームメンバーと共に頑張っていきます🌏✈️Mercari Software Technologies India Private Limited 設立のお知らせ https://t.co/nQM5SvvdvS
— Kayoreena🇮🇳Mercari India in Bengarulu (@kayoreena1021) June 24, 2022
メルカリが2022年、インドのバンガロールに開発拠点を設立することを発表したのがゴールデンウィーク明けだったため、それから1ヶ月半ほど遅れて、法人設立の発表ができました。インドのご存知の方は想像できると思いますが、この法人設立の手続きもそんなに簡単にはいかず(笑)右往曲折いろいろあって、ようやく正式に設立が完了したという形になります。
私は今年の頭からこのプロジェクトに本格的にアサインされていますが、6月現在、現地には2ヶ月ほど滞在していろいろな準備を進めてきました(今後も滞在予定)プロジェクトが始動してからなかなかのスピード感ではないかとは思います。
さて今回の記事では、この半年間で進めてきた現地での採用活動を通じて分かった「インドのエンジニア採用事情」についてわかる範囲で共有したいと思います。
今後、インドでエンジニアを採用してみたいという企業の方はぜひ参考にしてみてほしいです。
Contents
インドでのトップソフトウェアエンジニア採用心構え👩💻
📌コスト削減にはまずならない
📌カルチャーが超重要
📌リファーラルも超重要
📌とにかく動きが早い
📌良い人は他人への貢献が強い
📌サラリー高いのは当たり前
📌それより良い機会であることが重要
📌断られるのも当たり前#インドメモ— Kayoreena🇮🇳Mercari India in Bengarulu (@kayoreena1021) May 26, 2022
前提:そもそもなぜインドはエンジニア大国として有名?
メルカリインドオフィス(立ち上げたばかり!)でインターンのShivamと
そもそもなぜこれだけインドはエンジニア大国として注目されているのでしょうか。ここでは2022年にメルカリで行ったインド開発拠点設立に関するメディアブリーフィングで発表された内容をもとに説明します。
1.エンジニアの数そのものが多い
もうすでに有名な話でもありますが、インドでは毎年、約150万人の工学系の学生が卒業しており、世界の理工系学位の取得者数に占める割合がインド20.6パーセント、日本1.6パーセントとなっています。その多くは、自身が学生時代に学んだ工学知識や英語力を武器に、世界的に有名な米国IT企業への就職を目指す傾向があります。
参考:世界で活躍するインド高度人材を、日本企業競争力強化の即戦力に
2.スタートアップ大国
さらにインドは近年、スタートアップ大国としても世界的に非常に有名です。インドの新規ユニコーン企業数は2021年だけで42社も出ています。
先日インドで100番目のユニコーン企業登場。
▶️はじめてインドでユニコーンが誕生日したのが2011年
▶️2021年だけで42個のユニコーン企業誕生
▶️全体の中でEコマースが23、Fintechが20
▶️FlipkartとBYJU’S最も高く37.6億ドルと21 億ドル
▶️バンガロール拠点が最も多い#インドメモ pic.twitter.com/YOCHmuh7lh— Kayoreena🇮🇳Mercari India in Bengarulu (@kayoreena1021) May 4, 2022
今年の5月には100社目のユニコーンも誕生しています。これはどんな背景があるかというと、簡単にいうと優秀なインド人の起業家マインド(日本では大企業勤務がステータスとされますが、インドでは自ら業を起こすことが優秀であるとされる考え)や、コロナ禍においてインド市場への投資家の期待が集まり、投資金額がここ数年で一気に拡大したという事情があります(2022年現在、この傾向はやや落ち着いており、一部のスタートアップではレイオフがされています)
こういった背景からも、インドはエンジニアが活躍する風土が整っています。
ではここから本日のテーマである「スタートアップ激戦区 インドのエンジニア採用事情」について私の考えを整理していきます。
結論:エンジニアはたくさんいるが「良いエンジニア」を採用するのは難しい
I met @sukeeshbabu who was ex-Mercari and just came back to India recently. He came to Mercari 🇯🇵 in 2018 as his first job. He really supports us #Mercariindia
I hope his new career will be a great journey🚀2018年IIT新卒採用で日本に来てくれたSukeeshと再会!元気そうで何より pic.twitter.com/QEkHHAonCo
— Kayoreena🇮🇳Mercari India in Bengarulu (@kayoreena1021) May 25, 2022
今日の結論はこれです(笑)これだけ覚えて帰って行ってもらえると良いです。
現地のインド出身のリクルーターや、採用に詳しい人が声を揃えていう呪文のような結論が「エンジニアはたくさんいるが「良いエンジニア」を採用するのは難しい」です。
これはどういうことかというと(そのままなのですが)エンジニア大国ということで、候補者の数は多いのですが、実際にプロダクト開発で即戦力になったり、大きなチームをまとめるマネージメントスキルと持っているなど、そういった(いわゆる)スキルの高いエンジニアというのはどこの企業もほしいため、採用はとても難しいという心構えが必要です。
もしあなたの企業が採用ページを公開すれば、応募が全く来ないということはないでしょう。インドの採用活動で使われているプラットフォームで一番活発なのはLinkedInです。これは私が社内に在籍するインド人エンジニア20名程度にアンケートを取った際も満場一致でLinkedInが支持されておりましたし(2位は口コミ)私もこの数ヶ月LinkedInを運用してきて、ほぼ毎日何かしらインドの候補者からDMが届くくらい、LinkedInのインパクトはすごいです(もし今後海外採用をしたいなら、今すぐLinkedInを開設して英語での運用を始めてください!)
しかし、届いたDMから実際に採用に至るケースは何ケースあるでしょう(そもそも毎日DMが届いても、正直見てられません)本当に優秀な人は、むしろ私たちからDMを送らないといけません。
もうこれはどこにおいても言えることですが、優秀なエンジニアはどこの国も、どこの企業もすごくほしい状態です。
コスト削減を目的にすると辛い
海外拠点開発ときくと「オフショア開発」をイメージする方も多くいるかもしれません。オフショア開発とは一般的に外部委託のような形態を取っており、本社(日本)の開発業務などの一部外国に依頼するという開発です。この手法では一般的に、コスト削減が目的とされる場合が多く、そのためこれまでは日本より物価の安いアジアの地域が拠点先として注目されてきました。
しかし今回のメルカリのインド拠点開発は、この形態とは全く異なります。
メルカリの場合、グループで行っている開発に、インドのメンバーも同じチームや工程に入って行うものなので、例えば採用の基準を甘くしたり、役割が変えられたりすることもありません。採用の基準が変わらないということは、引き続きスキルの高いエンジニアを採用していくため、当然報酬もグローバル水準にならざるを得ません。
上記の様に、特にインドのマーケットにおいてはスキルを持ったシニアタレントの需要が高騰しており、そのため、その層の報酬レンジは、正直日本のそれとほぼ変わらなくなってきているというのが現状です(この記事では具体的な数字は公開しませんが興味ある方は調べてみてください笑)ジュニア層に関しては、国の人口動態の特徴からも数が非常に多いため(ジュニア層のエンジニアの数は非常に多い)日本の給与相場と比較すると給与の幅は広くなっています。
また、我々の様に開発拠点やスタートアップの本社をバンガロールに置く企業は非常に増えているため、どの企業も報酬以外のベネフィットもたくさん準備しています。それらは全て企業のコストになります。
先日GoJek(インドネシア発のスーパーアプリ)のインド開発拠点の話聞いたのだが、
GoJekで働くインド人エンジニアは「機能を開発したら直接現地の人に声を聞いてフィードバックもらってくるまで実装しちゃダメ」というルールがあったらしく、実際にインドネシアに行っていたらしい▶️続く— Kayoreena🇮🇳Mercari India in Bengarulu (@kayoreena1021) May 29, 2022
あとこっちで同様に拠点開発してる(いわゆる)競合他社の話聞くと、エグいくらい投資してて笑う。テック企業ってエンジニア獲得のためにどの企業もすごい額使って生き残ってる。
GoogleやAmazonだって、簡単に採用はしてないんだろうなと。皆んな必死。
ここで攻め姿勢を辞めた瞬間、死にゆくだけだろう— Kayoreena🇮🇳Mercari India in Bengarulu (@kayoreena1021) May 29, 2022
会社が何をしているか?より、入ったらどんなメリットがあるか?が大事
これもインド(というかアジア圏)で採用する上で非常に重要な心構えですが、エンジニアはあなたの会社がどんな事業をやっているかより、入ったら自分のキャリアにとってどんなメリットがあるか?を非常に気にしています。
もちろん、どんな事業をやっているかということも重要ですが、それ以上に「報酬がいくらか」を伝えることが重要であり、これは日系企業はあまり得意ではないかもしれません。
日本の企業の発信は「どんなミッションを持って、どんな事業をしているか」という発信が強いと思います。それは悪いこととは言いませんが、候補者は「この企業は入ったらちゃんと報酬を支払ってくれるのだろうか」ということを気にしています。そのため私も、インドの友人に開発拠点の話をしたときに、ほぼ必ず「サラリーレンジを教えてほしい」と聞かれていました。そこがクリアでないと、友人にも紹介できないというフィードバックをもらうこともありました。
インドと日本の採用メッセージの大きな違い
日本▶️自分達はどんなことをしてる会社か?
インド▶️会社に入ったらどんなメリットを享受できるか?インドではメリットありそうと感じてもらえないとそれ以降の話聞いてもらえない。人事的にはEVP=従業員への価値提案が最も重要となる。#インドメモ pic.twitter.com/OB3IJKNDFN
— Kayoreena🇮🇳Mercari India in Bengarulu (@kayoreena1021) May 27, 2022
先日Shivamと話したときに、インドのエンジニアは市場からの需要が非常に大きいため、シンプルに条件がいい方に行きたいと言っていました。エンジニアは最初の6ヶ月くらい、その会社にロイヤリティーを強く持つことはなく、まずはその会社が自分達のためにどんな機会や報酬を提供してくれるか見極め、その後に徐々に貢献度を強くしていくという気持ちの変化があるそうです。そのため、会社が合わないと思えば、すぐに転職します。機会はたくさん溢れているからです。
報酬や福利厚生の話を最初からクリアに伝えることは非常に重要ですし、その面において市場で一定の競争力を持っておくことも非常に重要です。
リファーラルがとても重要
本日のインド開発拠点立ち上げチーム。
まだ正式にはオフィスオープンしてないため、しばらくは場所を借りて作業中。
Shivamが来てくれなかったら1人でやることになってた笑 本当に感謝🥲わい、なんかいっつもインドで立ち上げの仕事してる気がする笑🇮🇳#インドメモ pic.twitter.com/1o6EwsaSVw
— Kayoreena🇮🇳Mercari India in Bengarulu (@kayoreena1021) May 27, 2022
この開発拠点のプロジェクトが立ち上がった際に、社内にいるソフトウェアエンジニアを中心に現地の採用マーケットについてヒアリングしたのですが、LinkedInの次に支持されていた採用手法が「口コミ」でした。
インドのエンジニアの中での口コミは非常に重要であるため、まずは社内のメンバーが会社で幸せに働いている環境づくりが大切です。それができていれば、自然と社内のメンバーが採用に協力してくれます。最初は現地における拠点の評判はないため、すでに我々を知ってくれている社内のメンバーが一番重要なアンバサダーになってくれます。
また、現地のインナーサークルに入ることも非常に重要です。インドにおいて、熱意を持った良いメンバーは非常に協力的であるため、全体の成功のためにいろいろな情報を共有してくれます。
Having a lunch with @adadithya ex Head of Branding of GoJeck and Meesho which successfully has a good branding in India and he shared an insightful knowledge a lots 🚀✨
Thank you Adithya and @Aashishpunjabi1 for great opportunity!! 🙌 I’m learning many things #mercariindia 🇮🇳 pic.twitter.com/vVf2djTsbg
— Kayoreena🇮🇳Mercari India in Bengarulu (@kayoreena1021) May 25, 2022
TwitterやLinkedInなどのSNSツールと一緒に、現地のローカルコミュニティに足を運ぶことも非常に重要なので、そういったキーパーソンとつながり、情報を共有してもらえると採用活動のプラスになると思います。英語での発信や、現地でインフルエンスのありそうな方に積極的に絡んでみてください。
最後は金ではない
1 month business trip will over soon. Thank you so much everyone supporting me a lot 🙏🇮🇳 I’ll come back soon to meet our future colleagues ✨
今回の出張はここまで。帰国します🇯🇵
早く帰りたかったのに最終日はいつも切なくなる不思議な場所🇮🇳笑ではまた9時間後!#インドメモ pic.twitter.com/0Qwjxoqv1d
— Kayoreena🇮🇳Mercari India in Bengarulu (@kayoreena1021) June 8, 2022
コストの話や福利厚生の話ばかりすると、結局いい給与を支払わないといいエンジニアを採用できないのか…と絶望してしまいそうですが(それは一定あります)最後はお金が決定理由にはならなかったりします。
一番重要なのは「その会社が面白い機会を提供してくれるか」「情熱を持って働ける環境なのか」にかかっています。
「めちゃくちゃエキサイティングな機会と、相場より少し良い報酬」これがベストアンサーといえます。
お給料や福利厚生を大切にする文化はもちろん強いのですが、例えば給与が少し違ったくらいで、それを理由に企業を選んだりはしません。既に競争力がある報酬や福利厚生が準備されていれば、そこを前提として、最後は「機会」の勝負になります。
より面白く、裁量権があり、成長性がある機会をエンジニアは求めているため、そういった魅力的な環境であるかどうか、それを正しく伝えられるかどうかが重要になります。
今日はここまでのインドのエンジニア採用の所感についてまとめてみました。また現地の出張の様子なども更新していくのでTwitterもフォローいただけると嬉しいです!
もし今後採用を検討されている方はぜひ参考にしてみてください。
KAYO OSUMI
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